2025年12月30日から31日にかけて、東京ビッグサイトでコミックマーケット107(C107)が開催されました。50周年という歴史的な節目における圧倒的な熱量と、参加者たちの洗練された行動様式が光りました。
今回のC107は、企業ブースの戦略的変化や天候による環境の激変など、語るべきトピックが数多く存在します。私が収集した現地データと分析を基に、企業ブースの動向やコスプレイヤーのトレンドを網羅的に解説します。
企業ブースの戦略的二極化|「体験」か「物販」か
コミックマーケットの企業ブースは、単なるグッズ販売の場から、IP(知的財産)のブランド価値を最大化する実験場へと進化しました。
C107では、「物販を行わない」展示特化型と、「効率的に売る」物販最大化型の二極化が顕著です。
Yostarに見る「売らない」展示戦略
スマートフォン向けゲーム大手のYostarは、従来の定石を覆す「物販を行わない」という大胆な決断を下しました。物販列を排除することでブース全体を展示空間として開放し、新作『アズールプロミリア』の世界観を刷り込むことを優先しています。
この「売らない」展示は、来場者の滞留時間をコントロールし、回転率を高めつつ深いブランド体験を提供するための高度な計算に基づいています。ブース内では、キャラクターの大型アクリルパネルや、ゲーム内要素を再現した造形物が展示されました。
アニプレックスの「高効率リテール」戦略
Yostarとは対照的に、アニプレックスは保有する強力なIP群を活用した「物販」の王道を貫きました。電子マネー決済の推奨や購入制限の導入により、回転率を高めつつ機会損失を最小限に抑えています。
特に「お一人様各3点まで」という購入制限は、転売目的の大量購入を抑制するために機能しました。一般のファンに商品を広く行き渡らせるための、標準的かつ必須の防衛策といえます。

C107 主要企業ブース一覧
今回のC107で特に注目を集めた、南展示棟および西展示棟の主要企業ブースを一覧にまとめました。各社がどのようなIPを展開し、どのような戦略をとっていたかが一目で分かります。
出展企業リスト
私が現地で確認した主要なブース情報は以下の通りです。南展示棟に有力企業が集結している傾向が見て取れます。
| 企業名 | ブースNo. | 主な出展内容・IP | 戦略タイプ |
|---|---|---|---|
| Yostar | 西 1111 | 『アズールプロミリア』 | 体験特化(物販なし) |
| ステラソラ | 西 1211 | 『ステラソラ』 | ノベルティ配布(カイロ) |
| アニプレックス | 西 1321 | 『まどか☆マギカ』『グノーシア』 | 高効率物販 |
| TYPE-MOON | 西 1333 | 『月姫』『Fate』関連 | ブランド・リテール |
| アクアプラス | 西 1313 | 『ToHeart』『うたわれるもの』 | ノスタルジー喚起 |
| アリス・ギア・アイギス | 西 1433 | 『アリス・ギア・アイギス』 | 同人文化擬態 |
| 秋田書店 | 南 2211 | 『弱虫ペダル』『吸血鬼すぐ死ぬ』 | 50周年記念・文脈重視 |
| あおぎり高校 | 南 2311 | VTuberグループ | 公式の「薄い本」販売 |
| エンターグラム | 南 2411 | 『制服カノジョ』 | 声優・タレント訴求 |
ブース配置の傾向分析
企業ブースの南展示棟配置は完全に定着しました。空調や搬入出設備が整った南ホールは企業にとって快適ですが、一般参加者にとっては東展示棟からの移動距離が長くなります。
意図的に同人エリアと企業エリアをゾーニングすることで、両者の混在による混乱を防ぐ狙いがあります。参加者は目的のエリアに応じて、朝の待機列形成場所を戦略的に選ぶ必要がありました。
コスプレエリアの環境とトレンド
C107のコスプレエリアは、気象条件の極端な変動が参加者の行動を大きく左右しました。1日目の温暖さと2日目の寒波というコントラストが、衣装選択や滞留時間に直接的な影響を与えています。
モバイルゲームIPと視覚的トレンド
企業エリアを中心に、特定のゲームタイトルが採用したビジュアル戦略が会場全体のトレンドを牽引しました。特に『ブラウンダスト2』のブース展開は、視覚的なインパクトが絶大です。
『ブラウンダスト2』は、バニーガール衣装のコスプレイヤーを大規模に展開しました。初日の温暖な気候が追い風となり、多くのカメラマンを集める「囲み撮影」の渦を作り出しています。
注目のコスプレイヤー・ゲスト一覧
C107では、プロのコスプレイヤーが企業の「顔」としてブースに立つ事例が多く見られました。ここでは、話題となった公式コスプレイヤーやゲストを一覧で紹介します。
企業公式コスプレイヤー&ゲスト
特にYostarブース周辺では、トップクラスのレイヤーが集結し、さながら撮影会の様相を呈していました。私が注目したキャストは以下の通りです。
| 名前 | 関連ブース | 役名・内容 |
|---|---|---|
| 伊織もえ | Yostar | 『アズールプロミリア』シャル |
| むかで | Yostar | 『アズールプロミリア』寒悠悠 |
| Haruinu | Yostar | 『アズールプロミリア』洛卿 |
| こめこ | Yostar | 『アズールプロミリア』シンフォーリア |
| 雨音るみ | ステラソラ | 『ステラソラ』コハク |
| 凸守スズ | ステラソラ | 『ステラソラ』セイナ |
| 高橋昇平 | サークル参加 | 競輪選手(S級/A級) |
伊織もえ
むかで
Haruinu
こめこ
プロフェッショナル化するレイヤーたち
伊織もえ氏のようなトップレイヤーの参加形態は、単なる「参加者」から「集客装置」へと変化しています。彼女の存在自体がメディアコンテンツ化しており、企業がそのブランド力を借りて集客を行うパワーバランスの変容が見て取れます。
また、現役競輪選手である高橋昇平選手がサークル参加したことも大きな話題となりました。プロフェッショナルが「一人のオタク」として表現活動を行う姿は、コミックマーケット50周年の多様性を象徴する出来事です。
まとめ|C107が示した「参加」の未来形
コミックマーケット107は、単なる同人誌即売会を超え、日本のコンテンツ産業が世界に向けて最新のIP戦略を披露する見本市としての地位を確立しました。「体験特化」と「文脈消費」の潮流は、今後のイベントのあり方を占う重要な試金石です。
私が作成した企業ブースやコスプレイヤーの一覧表が、今回の振り返りや次回の対策に役立てば幸いです。特にYostarやアニプレックスのような大手企業の動向は、次回のC108以降も継続して注視する必要があります。
50年の歴史を持つコミケは、これからも変化し続ける巨大な実験場であり続けることでしょう。参加者一人ひとりが情報を適切に収集し、この「戦場」を楽しむための準備を怠らないことが大切です。

