Twitter(X)などのSNSで「エンカ」「エンカする」という言葉を見かけて、意味が分からず戸惑った経験はありませんか。私も最初は「一体何のことだろう?」と思っていました。
この「エンカ」という言葉、実は特定の界隈で非常に便利に使われているネットスラングです。この記事では、「エンカ」の正確な意味、語源、そして具体的な使い方まで、初心者にも分かりやすく徹底的に解説します。
「エンカ」とは?2つの主要な意味を解説

「エンカ」とは、一言でいえば「人と会うこと」を指すネットスラングです。主にTwitter(X)などのSNS上で、オンラインで繋がっている人同士が現実世界(オフライン)で顔を合わせる際に使われます。
この言葉の面白い点は、文脈によって正反対とも言える2つの意味を持つことです。
意味1|偶然の遭遇(ばったり会う)
一つ目の意味は、語源に近い「偶然の遭遇」です。街中やイベント会場などで、知り合いと予期せずばったり出会うことを「エンカした」と表現します。
- 使用例1「今日、渋谷で〇〇さん(フォロワー)とエンカした!」
- 使用例2「まさか地元の駅でエンカするとは思わなかった」
この使い方は、従来の「遭遇した」「出くわした」という言葉の、よりカジュアルなスラング表現といえます。
意味2|計画された面会(約束して会う)
二つ目の意味は、SNS上で使われる主流な用法で、「事前に約束して会うこと」です。オンライン上の知り合い(フォロワーなど)とオフラインで会う約束、いわゆる「オフ会」をすることを指します。
- 使用例1「明日のイベントでエンカしませんか?」
- 使用例2「〇〇さんと初エンカしてきた!」
このように、偶然ではなく意図的に会う約束を取り付ける際にも「エンカ」という言葉が積極的に使われます。
意味 | ニュアンス | 使用シーン |
偶然の遭遇 | ばったり会う、出くわす | 街中、駅、意外な場所 |
計画された面会 | 約束して会う、オフ会 | イベント会場、カフェ、特定の場所 |
なぜ2つの意味が共存するのか
「偶然」と「計画的」という逆の意味が共存しているのは不思議に思うかもしれません。これは、オンラインでの関係性が前提にあるためです。
ネット上の知り合いと現実に会う行為は、少し心理的なハードルがあります。「会いましょう」と直接的に言うよりも、「(もし会えたら)エンカしましょう」という「偶然」のニュアンスを借りることで、誘う側も誘われる側も気軽な気持ちで約束できるのです。
「エンカ」は、オンラインとオフラインの境界をスムーズにつなぐための、便利なコミュニケーションツールとして機能しています。
「エンカ」の語源|ゲーム用語「エンカウント」
「エンカ」という言葉のルーツは、その響きからも想像できるように、ビデオゲームの専門用語にあります。
英語の「Encounter」からゲーム用語へ
「エンカ」の直接の語源は、「エンカウント(Encounter)」という言葉です。英語の「encounter」は、「遭遇する」「出会う」といった意味を持ちます。
この「エンカウント」が、特にロールプレイングゲーム(RPG)の世界で特有の用語として使われ始めました。ゲーム内では、「プレイヤーがフィールドを移動中に、敵キャラクターと遭遇し戦闘が始まること」を指します。
「エンカウント」から「エンカ」への変化
ゲーム用語としての「エンカウント」には、「予期せず」「突発的に」敵と遭遇するというニュアンスが強く含まれていました。
この「エンカウント」が、インターネットスラング特有の略語化によって「エンカ」と短縮されました。ゲーマーやネットユーザーの間で使われるうちに、元々持っていた「敵と遭遇する」というネガティブな意味合いは薄れていきました。
結果として、「(予期せず)遭遇する」という中核的な意味だけが残り、それが転じて「人と会うこと」全般を指す汎用的なスラングへと変化したのです。
コミュニティ別「エンカ」の具体的な使い方
「エンカ」は、すべての若者が日常的に使う言葉ではありません。私がSNSを観察する限り、特定の趣味やコミュニティにおいて、より専門的かつ活発に使われる傾向があります。
オタク・ファンコミュニティでの使い方
「エンカ」という言葉が最も高密度で使われるのが、アニメ、ゲーム、アイドルなどのオタク・ファンコミュニティです。
イベントでの挨拶・交流
コミックマーケット(コミケ)やライブ、ファンミーティングなどの大規模イベントでは、「エンカ」は非常に重要な役割を果たします。
Twitter上で普段やり取りしている相互フォロワー同士が、広い会場で実際に会い、挨拶を交わしたり、手作りの名刺やプレゼントを交換したりします。この一連の行為を調整するために、「〇〇(会場名)でエンカしましょう」と呼びかけます。
グッズ交換の「取引」
ファンコミュニティにおける「エンカ」のもう一つの重要な用法が、「グッズの現地交換」です。これは単なる挨拶ではなく、明確な「取引」のアポイントメントを意味します。
イベント会場限定のグッズや、ランダム販売のグッズを希望のキャラクターと交換するため、事前にTwitterで約束を取り付けます。この場合、「現地でエンカ(=手渡し交換)できる方を探しています」といった形で使われます。
その他のコミュニティでの使い方
オタク・ファンコミュニティ以外でも、「エンカ」は特定の文脈で使われます。
- 鉄道ファン(撮り鉄)|有名な撮影スポットなどで、同じ趣味の仲間と偶然ばったり会うこと。
- コンセプトカフェ(コンカフェ)|キャスト(従業員)が、勤務時間外にプライベートでお客さんと偶然遭遇してしまうこと。
このように、共通の趣味や目的を持つ人々が集まる場所で、偶然の遭遇を指す言葉として定着している例が見られます。
要注意|「エンカ」にまつわる関連用語
「エンカ」という言葉を使う際は、その背景にあるネガティブな表現や、似ている言葉との違いも知っておく必要があります。
悪い意味?「エンカ厨」とは
「エンカ厨(えんかちゅう)」という派生語が存在します。これはネガティブな意味で使われる蔑称です。
「厨」はネットスラングで、特定の物事に過度に執着する人や、マナーの悪い人を指します。「エンカ厨」とは、趣味の交流といった本来の目的から逸脱し、オフラインでの出会い(特に異性との出会い)ばかりを過剰に求める人物を批判する言葉です。
コミュニティの輪を乱す迷惑なユーザーを指すため、自分がそう呼ばれないよう、節度を持った交流を心がけることが大切です。
「リア凸」との違い
「エンカ」と似た言葉に「リア凸(りあとつ)」があります。「リアル凸撃(とつげき)」の略語で、これもオンラインの相手と現実に会うことを指します。
しかし、両者のニュアンスは大きく異なります。「リア凸」は、相手の許可なく、あるいは予告なしに一方的に会いに行くという、攻撃的・突撃的な意味合いを強く持ちます。
対して「エンカ」は、偶然の遭遇を指す場合でもニュアンスは中立的であり、計画的な面会を指す場合は必ず「双方の合意」に基づいています。健全な交流は「エンカ」、迷惑行為は「リア凸」と使い分けられます。
まとめ
「エンカ」は、ゲーム用語の「エンカウント」を語源とするネットスラングです。「偶然会うこと」と「約束して会うこと」という2つの意味を持ち、特にSNSで繋がった人同士が現実世界で会う際に使われます。
特にファンコミュニティでは、イベントでの交流やグッズ交換の約束を取り付けるための実用的な言葉として定着しています。言葉の背景や関連用語も理解し、マナーを守って、オンライン・オフライン両方の交流を楽しみましょう。