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草壁シトヒ
在宅勤務の趣味ブロガー
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マンガ:ジャンル問わず読みますが、バトル系と感動系が特に好き。泣けるシーンはすぐに語りたくなるタイプ。

『2ちゃんねる』と『5ちゃんねる』の違いとは?分裂騒動の経緯まとめ

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日本最大級の匿名掲示板として知られる「2ちゃんねる」。しかし、現在「5ちゃんねる」という名前のサイトも存在し、両者の関係性や違いについて疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。これらの掲示板サイトは、もともと一つでしたが、運営を巡る対立や法的な争いを経て、現在は別々の存在となっています。

この記事では、「2ちゃんねる」の誕生から分裂、そして現在の「5ちゃんねる」と「2ch.sc」(西村氏側の2ちゃんねる)という二つのプラットフォームが存在するに至った経緯、それぞれの特徴や違いについて、初心者にも分かりやすく解説します。この歴史的背景と現状を知ることで、両サイトの違いを明確に理解できるようになるでしょう。

タップできる目次

日本のインターネット文化を築いた「2ちゃんねる」の誕生

日本のインターネット黎明期に登場し、その後のネット文化に多大な影響を与えた巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」。その誕生の経緯と、どのようにして社会現象と呼ばれるほどの存在になったのかを見ていきましょう。

始まりは「避難所」|創設者ひろゆき氏

巨大匿名掲示板「2ちゃんねる」(ドメイン|2ch.net)は、1999年5月頃、「ひろゆき」こと西村博之氏によって、彼の個人サイトとして開設されました。これは、当時人気だった電子掲示板「あめぞう掲示板」がサーバー不安定などの問題を抱えていたため、そのユーザーたちの「避難所」としての役割を意図して作られたものです。

1999年、ひろゆき氏による設立

西村博之氏は、米国留学中の1999年5月に「2ちゃんねる」を開設しました。正確な日付は不明ですが、同月30日に本人が開設を報告している記録があります。サイト名は、「あめぞう」のサブ的な位置づけ、つまり「2番目のチャンネル」というニュアンスで名付けられたと言われています。

当初はチャット機能なども備えていましたが、後に「スレッドフロート方式」と呼ばれる、新しい書き込みがあるとスレッドが一覧の上位に表示される形式の掲示板群へと特化していきました。このシステムが、活発な議論を促す土壌となりました。

先行掲示板「あめぞう」の問題

「2ちゃんねる」設立の直接的なきっかけは、先行していた人気掲示板「あめぞう」の不安定さでした。「あめぞう」は当時多くの利用者を抱えていましたが、頻繁なサーバーダウンやスクリプトによる荒らし行為に悩まされていました。

利用者は快適な議論の場を求めており、「2ちゃんねる」はその受け皿となることを目指しました。「避難所」という位置づけは、当時の切実な需要に応えるものだったわけです。

匿名性と自由な言論空間の提供

「2ちゃんねる」の最大の特徴は、匿名で書き込みができる点でした。これにより、利用者は社会的な立場や人間関係を気にすることなく、本音で様々な議論を交わすことができました。

この自由な雰囲気は多くの人々を惹きつけ、多種多様な意見が集まる場として機能しました。ただし、匿名性は誹謗中傷などの問題も生み出す両刃の剣でもありました。

社会現象へ|急成長と独特の文化形成

開設当初は一部のネットユーザーに知られる存在でしたが、特定の事件報道などをきっかけに、「2ちゃんねる」は爆発的な成長を遂げ、日本のインターネット文化を象徴する存在へと変貌していきます。

西鉄バスジャック事件と認知度向上

「2ちゃんねる」の知名度を一気に押し上げたのは、いくつかの社会的な事件でした。特に2000年5月に発生した「西鉄バスジャック事件(通称|ネオむぎ茶事件)」は、犯人が「2ちゃんねる」の利用者であったことから、マスメディアで大々的に報じられました。

この事件報道により、「2ちゃんねる」の名前は一般社会にも広く知れ渡り、利用者が爆発的に増加する結果を招きました。良くも悪くも、その存在感を示す大きな転機となった事件です。

「ハッキングから今晩のおかずまで」|多様な話題

サイトのトップページには「『ハッキング』から『今晩のおかず』まで」というスローガンが掲げられていました。これは、「2ちゃんねる」で扱われる話題の幅広さを象徴する言葉です。

専門的な技術情報から、政治・経済、趣味、ゴシップ、日常の雑談まで、ありとあらゆるテーマについて無数の「板」と呼ばれるカテゴリ別掲示板が設けられ、日々膨大な量の書き込みがなされました。

2ちゃんねる用語やAA文化

匿名で活発なコミュニケーションが行われる中で、「2ちゃんねる」独自のインターネット・サブカルチャーが育まれました。「w」(笑いを表す)、「乙」(お疲れ様の意)などの独特なネットスラング(2ちゃんねる用語)や、文字を組み合わせて絵を作るアスキーアート(AA)などがその代表例です。

これらの文化は「2ちゃんねる」の枠を超えてインターネット全体に広まり、日本のネット文化の形成に大きな影響を与えました。海外の匿名掲示板サイト(4chanなど)のモデルにもなったと言われています。

運営費確保と商業化の動き

利用者の急増に伴い、サイトを維持するためのサーバー費用なども増大しました。このため、運営の早い段階から収益化が模索されました。

2002年には、過去ログ(dat落ちしたスレッド)を閲覧するための有料サービス「2ちゃんねるビューア(通称|●、まる)」が開始されました。これは、巨大掲示板を安定的に運営していくための商業化への第一歩でした。

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運営体制の変遷と対立の火種

順調に成長を続けた「2ちゃんねる」でしたが、その裏側では運営体制に関する複雑な動きがありました。特にサーバーインフラを支えた人物との関係性が、後の大きな対立の種となっていきます。

サーバー管理のキーマン|ジム・ワトキンス氏

「2ちゃんねる」の巨大なアクセスを支える上で、サーバーインフラの安定供給は不可欠でした。その中心的な役割を担っていたのが、ジム・ワトキンス氏です。

インフラ提供者としての役割

ジム・ワトキンス氏は、2000年頃から「2ちゃんねる」の運営に関与し始めました。彼は、サイトの膨大なトラフィックを処理するためのサーバーを提供し、技術的な基盤を支える重要な存在でした。

ワトキンス氏が関連する会社(N.T.Technology社など)が、長年にわたりサーバーの提供を行っていたとされています。この技術的な依存関係が、後の力関係に影響を与えることになります。

PINKちゃんねるの運営

ワトキンス氏は、「2ちゃんねる」本体だけでなく、成人向けの話題を扱う関連サイト「PINKちゃんねる」の運営も行っていました。これも、「2ちゃんねる」のエコシステムの一部として機能していました。

名義変更と実質的な運営権

「2ちゃんねる」の運営を巡っては、その責任の所在を曖昧にするような動きも見られました。これは、主に法的なリスクを回避するための措置であったと考えられています。

シンガポール法人への名義移転

2009年1月、創設者の西村博之氏は、「2ch.net」の管理者名義を、自身が関与するシンガポールの法人「Packet Monster Inc. PTE. LTD.」(パケットモンスター社)に移転しました。

これにより、表向きの運営者はシンガポールの法人ということになりました。しかし、実質的な運営権は依然として西村氏が保持していたと見られています。

法的責任回避の意図

この名義移転の主な目的は、日本国内での法的責任、特に「2ちゃんねる」上の書き込みに関する名誉毀損訴訟などから、西村氏自身を切り離すことにあったと考えられています。

西村氏は以前から、海外サーバーや法人を利用して日本の法律の適用を回避しようとする姿勢を見せていました。この移転もその戦略の一環であった可能性が高いです。

所有権と管理権の曖昧化

しかし、この名義上の移転は、サイトの真の所有権と管理権の所在を曖昧にする結果を招きました。物理的なサーバーインフラを管理するジム・ワトキンス氏のような人物が、将来的に運営権を主張する余地を残すことになったからです。

この曖昧さが、後の運営権を巡る深刻な対立の伏線となりました。

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運命の分岐点|2014年の運営権掌握劇

2014年、「2ちゃんねる」の運営体制に激震が走ります。長年サーバーインフラを提供してきたジム・ワトキンス氏が、突如としてサイトの実質的な管理権限を掌握したのです。この出来事は、創設者である西村博之氏との決定的な対立を生み、「2ちゃんねる」分裂の直接的な原因となりました。

ワトキンス氏による実権掌握

2014年2月、ジム・ワトキンス氏は、「2ch.net」の管理権限を掌握し、西村博之氏を事実上、運営から排除しました。この突然の事態について、両者の主張は真っ向から対立しています。

サーバー料金未払いの主張(ワトキンス氏側)

ワトキンス氏側(関連会社N.T.Technology社、後のRace Queen Inc.)は、運営体制変更の理由として、西村氏側によるサーバー利用料金の長期にわたる未払いを挙げました。料金が支払われないため、サーバー提供者として運営を引き継ぐ必要があったと主張しました。

そして、Race Queen Inc.こそが「2ch.net」ドメインの正当な所有者であり、運営者であると宣言しました。

「違法な乗っ取り」の主張(西村氏側)

一方、西村博之氏は、このワトキンス氏側の動きを「違法なサーバー乗っ取り行為」であると激しく非難しました。サーバー料金未払いは口実であり、不当にサイトの支配権を奪われたと主張しました。

この主張の対立が、その後の泥沼の法廷闘争へと発展していくことになります。

背景にあったとされる出来事

この運営権掌握劇の背景には、単なる金銭問題だけでなく、当時の「2ちゃんねる」が抱えていた他の問題も影響していた可能性があります。

大規模個人情報流出事件の影響

運営体制変更の直前、2013年には「2ちゃんねるビューア(●)」の利用者情報を含む、大規模な個人情報流出事件が発生していました。この事件は、「2ちゃんねる」運営のずさんさを露呈し、セキュリティ体制や法的責任、運営コストに関するプレッシャーを高めました。

このような危機的な状況が、運営方針を巡る西村氏とワトキンス氏の間の潜在的な対立を顕在化させ、権力闘争を引き起こす引き金になった可能性が指摘されています。

運営方針を巡る対立の顕在化

流出事件などを経て、サイトの管理体制や将来の方向性について、西村氏とワトキンス氏の間で意見の相違が深刻化していた可能性があります。匿名性の維持と管理強化のバランスなど、根本的な運営哲学の違いがあったのかもしれません。

インフラ掌握者の優位性

長年にわたりサーバーインフラを提供し続けてきたワトキンス氏は、「2ちゃんねる」の存続に不可欠な技術基盤を物理的に管理していました。この事実は、彼に決定的な交渉力、あるいは実力行使における優位性を与えていました。

シンガポール法人への名義移転による所有権・管理権の曖昧さも相まって、両者の関係が悪化した際に、ワトキンス氏が実質的な支配権を確立することを容易にしたと考えられます。

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二つの「2ちゃんねる」|2ch.scの登場

「2ch.net」の管理権限をジム・ワトキンス氏側に奪われた西村博之氏は、すぐさま対抗措置に乗り出します。新たに別のドメインで「2ちゃんねる」を名乗るサイトを立ち上げ、ここに「2ちゃんねる」を名乗る二つの主要な掲示板サイトが並立する状況が生まれました。

西村氏による対抗策としての新サイト

西村氏は、「2ch.net」の運営権喪失を「乗っ取り」と断じ、その正当性を認めませんでした。そして、自らが管理する新たな「2ちゃんねる」を設立することで、その主張を具体化しました。

ドメイン「2ch.sc」での再出発

2014年4月、西村氏はドメイン「2ch.sc」を取得し、ここに新たな匿名掲示板システムを開設しました。彼はこのサイトを「2ちゃんねる」と称し、自らが管理人であると宣言しました。

これにより、「2ch.net」(ワトキンス氏側)と「2ch.sc」(西村氏側)という、二つの「2ちゃんねる」が存在する異例の状態となったのです。

旧サイトのインターフェースを踏襲

「2ch.sc」のデザインや掲示板(板)の構成は、オリジナルの「2ch.net」を意図的に模倣して作られました。これは、従来の「2ch.net」ユーザーを取り込み、自身が正統な「2ちゃんねる」の後継であるとアピールする狙いがあったと考えられます。

利用者にとっては、見た目や使い勝手がほとんど変わらないため、移行のハードルは低いものでした。

独自戦略|コンテンツコピーと転載自由

西村氏が立ち上げた「2ch.sc」は、単に「2ch.net」を模倣しただけではありませんでした。特にコンテンツの扱いに関して、ユニークかつ戦略的な特徴を持っています。

5ch.netからの自動クロール機能

「2ch.sc」の最も際立った特徴は、ライバルサイトである「5ch.net」(旧2ch.net)のサーバーを定期的に自動巡回(クロール)し、そこに投稿された内容をほぼリアルタイムで自身の掲示板にコピー(転載)する仕組みを導入したことです。

これにより、「2ch.sc」は自身で多くのオリジナルコンテンツを生み出さなくても、常に最新の話題で掲示板を活性化させることができました。事実上、「5ch.net」のコンテンツを利用して自身のサイトの魅力を維持している形です。

投稿の識別方法(ID末尾「.net」)

「2ch.sc」内で、「5ch.net」からコピーされた投稿か、それとも「2ch.sc」独自の投稿かを見分ける方法として、ユーザーIDの表示に工夫が凝らされている場合があります。コピーされた投稿のID末尾には「.net」が付与されることが多く、これによって元の投稿元を判別できることがあります。

ただし、すべてのコピー投稿に適用されるわけではなく、また「sc独自スレッド」としてコピーではないことを示す表示がされる場合もあります。

コンテンツ転載の全面許可

もう一つの大きな特徴は、コンテンツの二次利用に関するスタンスです。「5ch.net」が後に、いわゆる「まとめサイト」などによる無断転載を制限する方針を打ち出したのに対し、「2ch.sc」は開設当初から一貫して、サイト内のコンテンツ(コピーされたものも含む)の転載を全面的に許可しています。

これは、まとめサイト運営者などとの協力関係を築き、外部サイトを通じて「2ch.sc」のコンテンツ拡散と影響力拡大を図る戦略と考えられます。直接的な管理や収益よりも、リーチの最大化を優先する西村氏らしいアプローチと言えるでしょう。この方針の違いも、両サイトを区別する重要なポイントとなっています。

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法廷闘争と「5ちゃんねる」への名称変更

「2ch.net」の運営権を巡る西村博之氏とジム・ワトキンス氏側の対立は、日本国内外の法廷へと持ち込まれました。商標権とドメイン所有権という、デジタル資産の権利を巡る複雑な争いが繰り広げられ、最終的にワトキンス氏側はサイト名の変更という大きな戦略転換を余儀なくされます。

ねじれた権利関係|商標権 vs ドメイン所有権

分裂後、両者はそれぞれ自身の正当性を主張し、法的な手段に訴えました。しかし、その結果は単純なものではなく、権利関係が複雑にねじれた状態を生み出しました。

日本国内での商標権は西村氏へ

西村博之氏は、日本国内において「2ちゃんねる」および「2ch」という名称の商標権登録に成功しました。これにより、日本の法律上は、「2ちゃんねる」というブランド名は西村氏が保有することになりました。

ワトキンス氏側が「2ちゃんねる」の名称を使い続けることは、日本の商標法に抵触するリスクを抱えることになったのです。

ドメイン「2ch.net」の所有権

一方で、インターネット上の住所であるドメイン名「2ch.net」の所有権・管理権は、ワトキンス氏側(当時の運営会社Race Queen Inc.)が保持し続けました。これは、サイトのインフラを物理的に管理していたこと、そして過去の経緯から、ドメイン登録上の正当性が認められたためです。

WIPOの判断

西村氏は、世界知的所有権機関(WIPO)の紛争解決手続きを利用して、オリジナルのドメイン名「2ch.net」の返還を求めました。彼は、ワトキンス氏側によるドメイン占有は不法であると主張しました。

しかし、WIPOはこの申し立てを却下しました。WIPOの判断基準(統一ドメイン名紛争処理方針|UDRPなど)では、多くの場合、ドメインが悪意を持って登録・使用されていることなどを証明する必要があります。西村氏は日本の商標権を持っていましたが、WIPOの手続きにおいて、これらの要件を満たすことができなかったと推測されます。

結果として、日本国内の商標権は西村氏が持ち、国際的に認知されたドメイン「2ch.net」はワトキンス氏側が管理するという、非常に複雑で不安定な状況が固定化されました。

ワトキンス氏側の戦略的転換|「5ch.net」へ

この法的に不安定な状況と、西村氏からの継続的な法的圧力(商標権に基づく差止請求など)に対応するため、ワトキンス氏側は大きな決断を下します。

フィリピン法人Loki社への運営移管

2017年10月1日、ワトキンス氏は、「2ch.net」の運営を、従来のRace Queen Inc.から、新たに設立されたフィリピンに拠点を置く法人「Loki Technology, Inc.」(Loki社)に譲渡すると発表しました。

運営主体を、日本の司法権が及びにくいとされる海外法人に移すことで、法的なリスクを低減する狙いがあったと考えられます。

サイト名を「5ちゃんねる」に変更

運営移管と同時に、サイトの名称を従来の「2ちゃんねる」から「5ちゃんねる」(5channel)へと変更し、主要なドメインも「5ch.net」に移行しました。旧ドメイン「2ch.net」へのアクセスは、現在「5ch.net」へ自動的に転送(リダイレクト)される設定になっています。

商標権紛争回避と安定運営のため

この名称変更の公式な理由は、西村氏が保有する商標権に関する「無用な紛争」を避け、西村氏側からの「妨害行為」とされるものから距離を置き、ユーザーに安定したサービスを提供するため、と説明されました。

これは、ワトキンス氏側による「2ちゃんねる」ブランドを巡る争いからの事実上の撤退であり、戦略的なリブランディングでした。名称は放棄するものの、オリジナルの掲示板コミュニティとプラットフォームの実質的な管理権は維持するという、現実的な選択だったと言えます。

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現在の状況|「5ch.net」と「2ch.sc」徹底比較

長年にわたる対立と法廷闘争を経て、「2ちゃんねる」は「5ch.net」と「2ch.sc」という二つの異なるプラットフォームに分裂しました。現在、これら二つのサイトはどのように運営され、どのような違いがあるのでしょうか。運営体制、コンテンツの扱い、そして利用者にとって重要な削除依頼の方法などを比較してみましょう。

運営体制の違い

両サイトは、運営主体やその法的基盤において明確な違いがあります。

5ch.net|Loki Technology Inc. (フィリピン)

現在の「5ch.net」は、フィリピンに登記された法人「Loki Technology Inc.」によって運営されています。代表者はWilson M. Orje氏とされていますが、ジム・ワトキンス氏は会長(Chairman)として依然として運営に関与していると見られています。

運営ポリシーや削除基準などは、旧運営会社Race Queen Inc.時代から引き継がれている部分が多いとされ、運営の継続性が保たれています。

2ch.sc|西村博之氏 / ボランティア (?)

一方、「2ch.sc」の公式な運営者は創設者である西村博之氏とされています。関連法人としてシンガポールのPacket Monster Inc.が挙げられていましたが、この法人は2023年に清算された、あるいは登記が抹消されたとの情報があり、法的な実体が不明確になっています。

日常的なサイト管理、特に投稿の削除などは、給与を受け取らない「運営ボランティア」や「削除人」と呼ばれる人々に大きく依存しているのが実情です。運営主体の法人格が不明瞭な点は、法的な責任の所在を曖昧にする要因となっています。

運営法人の法的安定性

「5ch.net」を運営するLoki社は現存する法人ですが、「2ch.sc」に関連するとされたPacket Monster社の状況は不透明です。この違いは、例えば法的措置を取る際の相手方の特定しやすさなどに影響します。

コンテンツと機能の違い

サイトの根幹であるコンテンツの生成方法や、その扱いについても大きな違いが見られます。

投稿内容の流れ|コピー機能の有無

最大の違いはコンテンツの流れです。「5ch.net」に投稿された内容は、ほぼ自動的に「2ch.sc」にコピー(クロール)されます。しかし、その逆、つまり「2ch.sc」から「5ch.net」へのコピーは行われません。

これにより、「2ch.sc」は「5ch.net」の活況を利用してコンテンツ量を維持していますが、「5ch.net」は独自のコンテンツのみで運営されています。

コンテンツ転載に関するスタンス

外部サイト(まとめサイトなど)によるコンテンツの転載について、「5ch.net」は原則として制限する方針を示しています。一方、「2ch.sc」は開設以来、一貫して転載を許可するオープンな姿勢を取っています。

これは、コンテンツの管理・統制を重視する「5ch.net」と、リーチ拡大を優先する「2ch.sc」の戦略の違いを反映しています。

書き込み削除依頼の方法と対応

誹謗中傷などの問題投稿があった場合、その削除を依頼する方法も両サイトで大きく異なります。これは利用者にとって非常に重要な違いです。

5ch.netの削除プロセス(非公開)

「5ch.net」(Loki社)への削除依頼は、専用のメールアドレスやウェブフォームを通じて、運営者に対して非公開で行います。依頼時には、名誉毀損やプライバシー侵害といった法的な権利侵害があること、そして依頼者本人であることを証明する書類の提出などが求められるのが一般的です。

裁判所による削除命令(仮処分など)が出された場合には、原則として従う方針を示しており、法的な手続きはLoki社を相手取って行う必要があります。

2ch.scの削除プロセス(公開掲示板)

「2ch.sc」(西村氏側)への削除依頼は、原則として、誰でも閲覧できる公開の「削除依頼掲示板」を通じて行わなければなりません。メールや電話など、非公開での依頼は一切受け付けないと明言されています。

削除の判断は、ボランティアの「削除人」が独自のガイドラインに基づいて行いますが、対応のスピードや一貫性にはばらつきがあると指摘されています。

削除に必要な手続きと法的措置

「5ch.net」は法的な根拠や裁判所命令を重視する傾向があります。「2ch.sc」はボランティアによる判断が基本ですが、法的措置(仮処分など)も不可能ではありません。ただし、運営法人の状況が不明確なため、手続きはより複雑になる可能性があります。裁判所の命令が出た後でも、改めて公開の削除掲示板で申請が必要となる場合もあります。

両サイトへの依頼が必要なケース

「5ch.net」に投稿された内容は「2ch.sc」にコピーされるため、元の投稿が「5ch.net」にあった場合、その書き込みを完全に削除するには、「5ch.net」と「2ch.sc」の両方に対して、それぞれの方法で削除依頼を行う必要があります。これは被害者にとって大きな負担となります。

比較表で見る主な違い

これまでの違いを表にまとめると以下のようになります。

5ch.net (5ちゃんねる)2ch.sc (2ちゃんねる)
現在の名称5ちゃんねる (5channel)2ちゃんねる (2channel)
ドメイン5ch.net (旧 2ch.net)2ch.sc
元祖2ch創設者西村博之西村博之
現在の運営者Loki Technology Inc. (フィリピン法人)西村博之 / ボランティア (?)
運営法人の状況活動中の法人Packet Monster Inc. 清算済みか? (不透明)
コンテンツ生成オリジナル投稿オリジナル投稿 + 5ch.netからの自動コピー
コンテンツコピーなし5ch.netの投稿を自動コピー
削除依頼方法非公開メール/フォーム; 裁判所命令重視公開掲示板のみ; ボランティア判断中心
商標権者(日本国内)(西村氏保有)西村博之
コンテンツ転載スタンス制限あり許可

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2023年知財高裁判決|「乗っ取り」は違法と認定

長年にわたり繰り広げられてきた西村博之氏とジム・ワトキンス氏側(旧2ch.net運営法人)の法廷闘争は、2023年に日本の知的財産高等裁判所で一つの大きな節目を迎えました。この判決は、2014年の運営権掌握が違法な「乗っ取り」であったと認定するものでした。

判決のポイント

2023年1月26日に下された知財高裁の判決は、いくつかの重要な点を含んでいます。

ワトキンス氏側の行為を不正競争防止法違反と認定

判決は、地方裁判所の一部判断を覆し、2014年にワトキンス氏側のRace Queen Inc.が行った「2ch.net」運営権の掌握行為が、不正競争防止法に違反する違法なものであったと明確に認定しました。これは、西村氏が長年主張してきた「乗っ取り」という訴えが、日本の司法によって認められたことを意味します。

西村氏への損害賠償命令(約2億1700万円)

裁判所は、違法な運営権掌握の結果、Race Queen Inc.が「2ch.net」を管理していた期間(Loki社への譲渡前まで)に得たと推認される広告収入などに基づき、約2億1700万円の損害賠償を西村氏に対して支払うよう命じました。

差止請求は棄却

一方で、西村氏が求めていた「2ちゃんねる」などの商標やドメイン名の使用差止請求については棄却されました。その理由は、判決時点で被告側(ワトキンス氏側)は既に「2ちゃんねる」や「2ch.net」の使用をやめ、「5ch.net」へと移行していたため、差し止める対象が存在しないと判断されたからです。

判決の影響と今後の見通し

この知財高裁判決は、歴史的な経緯に一定の法的評価を下しましたが、分裂したプラットフォームの現状に直接的な変化をもたらすものではありませんでした。

西村氏の主張に法的根拠

判決は、西村氏が「2ch.net」から不当に排除されたという主張に、法的な正当性を与えました。創設者としての彼の立場と、「2ちゃんねる」ブランド形成における貢献が認められた形です。

賠償金回収の実現性

損害賠償命令が出されましたが、その対象は既に運営から離脱しているRace Queen Inc.です。実際に西村氏が賠償金を受け取れるかどうかは不透明です。過去に西村氏自身が、自身に対する損害賠償判決の支払いを長年拒否してきた経緯もあり、回収の実現性には疑問符がつきます。

プラットフォーム分裂状態は継続

判決は過去の行為に対する判断であり、現在「5ch.net」を運営するLoki社(別法人)に直接的な影響を与えるものではありません。また、差止請求も棄却されたため、「5ch.net」の運営が法的に停止されることもありません。

したがって、この判決が出た後も、「5ch.net」と「2ch.sc」という二つのプラットフォームが並立する状況は変わらず、分裂状態は今後も継続する見込みです。判決の意義は、運営への実質的な影響よりも、歴史的な事実認定や象徴的な意味合いが大きいと言えるでしょう。

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まとめ

「2ちゃんねる」と「5ちゃんねる」の違いは、単なる名前の違いではなく、創設者である西村博之氏と、サーバーインフラを提供していたジム・ワトキンス氏との間の深刻な対立、運営権の争奪、そして複雑な法廷闘争という長い歴史に基づいています。

もともとは西村氏が設立した「2ch.net」でしたが、2014年の運営権掌握劇を経てワトキンス氏側の管理下に置かれました。その後、商標権の問題などから2017年に「5ch.net」へと名称を変更し、フィリピン法人Loki Technology Inc.によって運営されています。これが現在の「5ちゃんねる」です。

一方、運営権を失った西村氏は、対抗して「2ch.sc」というドメインで新たな「2ちゃんねる」を立ち上げました。このサイトは、西村氏自身が運営に関与し、「5ch.net」の投稿を自動的にコピーする機能と、コンテンツ転載を許可する点が大きな特徴です。

2023年には日本の裁判所が、2014年のワトキンス氏側の行為を「違法な乗っ取り」と認定しましたが、この判決によっても二つのサイトが統合されることはなく、分裂状態は続いています。

利用者にとっては、特に誹謗中傷などの被害を受けた際の削除依頼の方法が両サイトで大きく異なる点(5ch.netは非公開、2ch.scは公開掲示板)や、「5ch.net」の投稿は「2ch.sc」にもコピーされるため両方への対応が必要になる場合がある点などを理解しておくことが重要です。

この複雑な分裂の経緯と、それぞれのサイトの現在の運営体制や特徴を知ることで、「2ちゃんねる」と「5ちゃんねる」の違いを正しく認識し、これらの巨大匿名掲示板と適切に関わっていくことができるでしょう。

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