アニメ『約束のネバーランド』は、多くのファンを魅了した作品です。特に第1期は、その息をのむような展開と心理描写で「神アニメ」とまで呼ばれました。
しかし、第2期は一転して「打ち切り」「失敗作」という厳しい評価を受けることになります。絶賛から一転、なぜこれほどの炎上騒動になったのでしょうか。
この記事では、アニメ2期が酷評された真相と、その背景にある制作上の理由を深掘りします。私が分析するに、そこには複数の深刻な問題点が隠されていました。
アニメ『約束のネバーランド』2期が「打ち切り」と呼ばれる理由
ここで言う「打ち切り」という言葉は、放送が途中で中止されたという意味ではありません。原作の膨大な物語を強引に完結させ、続編の望みを断ち切った制作判断そのものが「物語の打ち切り」と捉えられているのです。
第1期の圧倒的な成功と高い期待
2019年に放送された第1期は、原作の魅力を最大限に引き出した見事なアニメ化でした。グレイス=フィールドハウス脱獄まで(原作1巻~5巻)を、12話という構成で丁寧に描き切りました。
その圧倒的なクオリティの高さから、視聴者は当然、第2期にも同等かそれ以上のものを期待していました。物語の続きを心待ちにしていたファンは世界中にいたはずです。
第2期で起こった「物語の崩壊」
しかし、2021年に放送された第2期は、その大きな期待を根底から裏切る内容でした。物語の大部分が省略され、原作とは全く異なる結末を迎えたのです。
原作ファンはもちろん、アニメから入った視聴者でさえ、その性急で説明不足な展開に困惑しました。これが「事実上の打ち切り」と非難される最大の理由です。
なぜ炎上?2期が酷評された3つの大きな要因
第2期の評価を決定的に下げた要因は、大きく分けて3つあります。これらは個別の問題ではなく、すべてが連鎖して物語全体を破綻させていました。
原作の重要エピソードの完全な省略
私が最も衝撃を受けたのは、物語の根幹に関わる重要なエピソードが丸ごとカットされたことです。その代表格が「ゴールディ・ポンド(GP)編」です。
このエピソードは、エマたちが世界の残酷な真実と直面し、それでも絶望に抗って戦う意志を固める、原作でも屈指の人気を誇る章でした。
具体的には、以下のような物語の核心部分が省略されています。
- 鬼の貴族が娯楽として食用児を狩る秘密の猟場「ゴールディ・ポンド」
- エマが初めて葛藤の末に鬼を殺害し、思想的に大きく成長する過程
- 後の展開に深く関わる、ルーカスをはじめとした多くの新キャラクター
これらを全て省略したことで、物語の深みとキャラクターの成長基盤が根本から失われました。
主要キャラクターの不在と魅力の低下
「GP編」の省略に伴い、原作における極めて重要な人気キャラクターである「ユウゴ」の存在も、アニメでは完全に消去されました。ユウゴは、かつて脱獄した大人の生存者であり、子供たちを導く指導者、そして父親のような存在でした。
彼の不在は、物語から大きな感動のピークを奪い去りました。主人公エマの行動原理も、原作とは大きく変わってしまいます。
原作では、エマは「GP編」での凄惨な戦いと葛藤を経て、それでも「鬼を絶滅させたくない」という理想を掲げます。しかしアニメでは、その重要な過程が全て欠落しているため、彼女の言動が現実味のない、ただの理想論のように薄っぺらく映ってしまいました。
原作15巻分を11話に圧縮した構成
全ての破綻の根本的な原因は、その無謀すぎるペース配分にあります。第1期と第2期の構成を比較すると、その異常さが一目で分かります。
| 比較 | アニメ話数 | アニメ化された原作 | 1話あたりの消化量(目安) |
| 第1期 | 12話 | 5巻分(約37話) | 約3.1話 |
| 第2期 | 11話 | 15巻分(約144話) | 約13.1話 |
第1期が原作約3話分をアニメ1話でじっくり描いたのに対し、第2期は実に4倍以上となる約13話分を1話に詰め込んでいます。これでは丁寧な心理描写や伏線回収は不可能です。
特に最終回は、原作9巻分にも相当する膨大なクライマックスの物語を、セリフのない静止画を繋ぎ合わせた「スライドショー」として処理するという衝撃的な結末でした。これは物語を語ることを放棄したと言わざるを得ません。
アニメオリジナル展開の裏側|制作陣の意図とは
では、なぜ制作陣はこれほど強引で、原作を無視したオリジナル展開を選んだのでしょうか。そこには商業的な事情が透けて見えます。
原作完結と連動した商業的戦略
最も有力な仮説は、出資者たちで構成される「製作委員会」の意向です。原作漫画は2020年6月に完結しました。
アニメ第2期はその直後、2021年1月からの放送でした。製作委員会が、原作完結の話題性が高いうちにアニメも完結させ、メディアミックス展開による商業的利益を最大化しようとした可能性があります。
複数年にわたる長期的なシリーズ化は、ファンの熱が冷めるリスクを伴います。そのため、品質を犠牲にしてでも「1シーズンでの完結」という短期的な利益を優先したという判断です。
終盤で消えた原作者のクレジット
この仮説を裏付けるかのように、非常に不可解な事実があります。原作者の白井カイウ氏は、第2期で「シリーズ構成」としてクレジットされていました。
しかし、物語が最も破綻し、批判が集中した最終盤の第10話と第11話では、氏のクレジットが外れているのです。
これは、原作者がこの結末、特にあのスライドショーのようなエンディングを承認していなかった可能性を強く示唆します。制作の最終段階で、当初の構想が維持できなくなるほどの重大な方針転換があったことは想像に難くありません。
まとめ|『約束のネバーランド』2期から私たちが学ぶこと
アニメ『約束のネバーランド』第2期は、なぜ「打ち切り」と呼ばれるほどの事態になったのか、その真相を深掘りしました。原因は、作品へのリスペクトよりも商業的な効率を優先した制作戦略にあったと私は結論付けます。
原作の重要なエピソードやキャラクターを省略し、物語の魂を抜き取ってしまったのです。第1期の輝きを知っているからこそ、この結末は非常に残念なものでした。
この一件は、愛される作品のアニメ化がいかに難しいか、そしてファンの信頼を裏切る代償がいかに大きいかを私たちに教えています。原作の持つ本来の魅力を、いつか正しい形で再び映像化してほしいと願うファンは、今も少なくありません。
