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草壁シトヒ
くさかべしとひ
<趣味・得意分野>
アニメ:Netflix, DMM TV, Disney+, アマプラでジャンル問わず視聴。最近は韓流ドラマに帰着。

ゲーム:時間泥棒なRPGが大好物。最新作より、レトロなドット絵に惹かれる懐古厨。

マンガ:ジャンル問わず読みますが、バトル系と感動系が特に好き。泣けるシーンはすぐに語りたくなるタイプ。

奇跡の新C99開催!『新コミックマーケット99』の舞台裏

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2021年の年末、東京ビッグサイトにあの熱気が戻ってきました。新型コロナウイルスの影響で中止や延期を余儀なくされていた世界最大の同人誌即売会が、ついに復活を遂げたのです。

私が会場に足を踏み入れた瞬間、以前とは異なる緊張感と、それを上回る感動が全身を駆け巡りました。今回の「コミックマーケット99(C99)」は、単なるイベントの再開ではありません。それは、パンデミック下における大規模イベントのあり方を問う、壮大な社会実験でもありました。

この記事では、現地で感じた空気感と共に、運営の舞台裏や劇的に変化したシステムについて詳しく解説します。「新コミックマーケット」と銘打たれたこのイベントが、私たちに何を残したのかを一緒に振り返りましょう。

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「新コミックマーケット」という名のパラダイムシフト

今回の開催は、従来のコミケとは全く異なる概念で運営されました。運営側が「新」という言葉を冠した背景には、これまでの常識を覆す大きな決断があったといえます。

開催に至るまでの苦難と決断

コミックマーケット98の中止は、多くの同人作家や参加者に深い喪失感を与えました。さらに、2021年のゴールデンウィークに予定されていたC99も、直前の緊急事態宣言によって延期を余儀なくされています。

度重なる不運に見舞われながらも、準備会は決して諦めませんでした。

本来であれば3日間や4日間の開催が通例ですが、今回は12月30日と31日の2日間開催へと短縮されています。これは会場確保の難しさや感染リスクを最小限に抑えるための苦渋の選択でした。それでも「開催する」という事実に、私は震えるほどの喜びを感じたものです。

全入から選別へ|チケット制の導入

かつてのコミケは「来るもの拒まず」の精神で、誰でも自由に参加できました。しかし今回は、その理念を一時的に封印し、完全チケット制へと移行しています。会場内の滞留人数をコントロールするためには、やむを得ない措置でした。

チケットは事前抽選販売となり、多くの落選者が発生する事態となりました。これにより、参加権そのものが「プラチナチケット」化しています。「行きたくても行けない」という状況は辛いものでしたが、これによって会場内の安全が保たれたのは間違いありません。

チケット種類概要
アーリー入場開場前から待機列に並べる優先チケット
一般入場指定された時間以降に入場できるチケット
コスプレ更衣室利用付きコスプレイヤー専用の更衣室利用権付きチケット

情報媒体のデジタル化とカタログの行方

これまでのコミケといえば、電話帳のような厚さのカタログが名物でした。しかし今回は、延期の影響やシステム変更に伴い、冊子版カタログが入場証としての機能を失っています。その結果、参加者は「コミケWebカタログ」やSNSを駆使して情報を集める必要がありました。

私はスマホを片手に、リアルタイムで変わる情報を必死に追いました。特にTwitter(現X)での情報共有は、参加者同士のライフラインとなっていた印象です。デジタルネイティブな運営への転換は、今後のイベントのスタンダードになるでしょう。

徹底された防疫プロトコルと会場ゾーニング

開催の実現には、政府や東京都が定める厳しいガイドラインをクリアする必要がありました。
そのために導入されたのが、徹底的な防疫対策と会場の物理的な分断です。

ワクチン・検査パッケージの実証実験

今回のC99は、政府の「ワクチン・検査パッケージ」技術実証として開催されました。入場ゲートでは、これまでにない厳重なチェックが行われています。スムーズな入場のために、私たち参加者も事前の準備が欠かせませんでした。

具体的な入場フローは以下の通りです。

  • サーマルカメラによる検温
  • ワクチン接種証明書またはPCR陰性証明の提示
  • 身分証明書による本人確認
  • リストバンドの装着

これらすべての関門を突破した者だけが、会場への入場を許されました。スタッフの方々が一人ひとり丁寧に確認を行う姿には、頭が下がる思いです。この厳格な運用があったからこそ、私たちは安心してイベントを楽しむことができました。

東西分断と移動制限の真実

会場構成において最も衝撃的だったのは、エリアの完全分断です。広大な東京ビッグサイトを「東地区」と「西南地区」の二つに分け、その間の移動を原則禁止としました。これは、万が一感染者が発生した場合の追跡を容易にするための策です。

かつて多くの人が行き交った「ブリッジ」は閉鎖され、自由な回遊は封じられました。「東で同人誌を買ってから西の企業ブースへ」というお決まりのルートが使えなくなったのです。チケット購入時にエリアを選択する必要があり、参加者は事前の計画性が強く求められました。

参加者に求められた新しいマナー

会場内では、「自分が感染しない・人にうつさない」という意識が徹底されていました。不織布マスクの着用はもちろん、大声での会話や挨拶回りの自粛が求められています。かつての喧騒とは異なり、静かな熱気が会場を包んでいました。

参加者は「客」ではなく、イベントを成立させる「協力者」としての振る舞いを見せています。黙々と列に並び、手指消毒を励行する姿は、オタク文化の規律正しさを証明していました。この一体感こそが、今回の成功を支えた最大の要因だといえます。

数字で見るC99の規模と企業出展の動向

規模を縮小したとはいえ、C99は依然として巨大なイベントでした。公開されたデータを紐解くと、その特異な開催状況が浮き彫りになります。

来場者数とサークル配置の変容

1日あたりの来場者数は約5万5000人、2日間で合計約11万人に抑えられました。全盛期には1日で20万人が押し寄せたことを考えると、約4分の1の規模です。数字だけ見れば寂しさを感じるかもしれませんが、会場内の快適さは段違いでした。

人が減った分、サークルスペース間の通路幅は広く確保されています。「密」を回避する配置によって、余裕を持って作品を見て回ることができました。混雑によるストレスが減った点は、皮肉にも怪我の功名といえるかもしれません。

企業ブースの対応とハイブリッド化

企業ブースは「西南地区」の南展示棟4階に集約されました。出展企業数は131社に上りましたが、東地区の参加者が立ち寄れないという制約がありました。そのため、各企業は現地販売だけでなく、通販を強化する動きを見せています。

企業名主な対応内容
ufotableアニメ関連グッズ販売に加え、通販を併用
セカンドショット混雑時の列形成一時停止など、安全優先の運営
郵便局物販ブースフレーム切手セット等を販売しつつ、通販も実施

多くの企業が「事後通販」や「期間中通販」を実施し、会場に来られないファンへの救済措置を講じました。リアルイベントとECサイトを融合させたハイブリッドな運営モデルが、ここに確立されたのです。

交通インフラとICカードの活用

来場者の分散により、始発列車の殺人的な混雑は緩和されました。運営側は券売機の混雑を防ぐため、交通系ICカードの事前チャージを強く推奨しています。スムーズな移動は感染リスクを下げるだけでなく、イベント全体の満足度向上にも寄与しました。

まとめ|未来へ繋がる「開催」という実績

コミックマーケット99は、多くの制約の中で行われた異例の開催でした。しかし、クラスターを発生させずに11万人規模のイベントを完遂した事実は、何物にも代えがたい成果です。

「開催すること」自体が最大の目的であり、勝利であったといえます。この成功は、コロナ禍で停滞していたエンターテインメント業界全体に大きな希望を与えました。物理的な分断やチケット制という不自由さはありましたが、それ以上に「場」を守り抜いた意義は大きいものです。

今回の経験は、間違いなく次回のC100、そしてその先の未来へと繋がっていくでしょう。参加者全員で作り上げたこの奇跡の新C99を、私は一人のオタクとして誇りに思います。

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