「バブみ」という言葉、最近よく耳にします。私がこのトレンドで特に注目しているのは、単なる若作りではない、その奥深い魅力です。バブみメイクとは、赤ちゃんや幼児が持つ特有の丸みや柔らかさ、無邪気さをメイクで表現するスタイルです。
このメイクの根底には、人間が本能的に「守りたい」と感じるベビースキーマ(丸い顔、大きな目など)が存在します。つまり、バブみメイクのゴールは、若く見せること以上に、「守りたくなる」ような無防備さや健康的な生命感を演出することにあるのです。

「バブみメイク」とは? | 7つの主要特徴
バブみメイクを理解するには、その定義と具体的な特徴を知る必要があります。私が考えるこのメイクの核心は、本能的な可愛さの再現です。
「バブみ」の定義と心理的背景
「バブみ」とは、赤ちゃんが持つ純粋無垢な可愛らしさや、他者の庇護欲をかき立てるような特徴を指します。メイクアップにおける「バブみ」は、これらの要素を技術的に模倣し、見る人に「可愛い」「守りたい」という本能的な感情を抱かせるスタイルです。
このスタイルが多くの人を惹きつける理由は、生物学的な本能にあります。人間は丸い顔や大きな目といった特徴(ベビースキーマ)を見ると、無意識に愛おしさを感じるようにできています。バブみメイクは、この心理的効果を巧みに利用した、非常に計算された美学なのです。
メイクで目指す「バブみ顔」の7つの特徴
「バブみ顔」を構成する物理的特徴は明確です。私がメイクで再現する際、特に意識しているのは以下の7つのポイントです。
- ふっくらとした頬(オージーカーブ)|前方に丸みのある頬
- 強調された涙袋|目の縦幅を強調し、視覚的な重心を下げる
- 丸みのある「タレ目」|優しく親しみやすい印象の目元
- ぽってりした唇|潤いと丸みがあり、境界線があいまいな唇
- 短縮された人中|顔の中心部(中顔面)が短い印象
- 柔らかく薄い眉|顔の「フレーム」としての印象を意図的に弱める
- ツヤと血色感のある肌|潤いに満ちた、内側から発光するような健康的な肌
この記事では、これら7つの特徴をメイク技術によって体系的に構築するための、具体的な実践ガイドを解説していきます。
ベースメイク編|触れたくなる「赤ちゃん肌」の創出
「バブみ」のベースメイクにおける核心は、色(カバー力)よりも質感(ツヤ)とトーン(血色)を優先する点にあります。私が実践しているのは、ファンデーションで肌を「覆う」のではなく、肌そのものを「濡らす」という感覚です。
Step 1-2|スキンケアとプライマー
「バブみ」のツヤは、メイクアップ以前の徹底した保湿から始まります。特にチークが粉っぽくなるのを防ぐためにも、メイク前の保湿は不可欠です。肌が水分を十分に吸い込み、内側から発光するような状態を作り出します。
プライマー(下地)は、肌の透明感と血色を仕込むために重要です。私が推奨するのは、肌の色ムラや暗さを軽減し、明るい印象を与えるピンク系の下地です。ピンク系の下地は、肌の黄ぐすみを補正し、肌の内側から滲み出るような自然な「血色感」を仕込みます。これが後続のチークカラーと融合し、よりリアルな「上気した」印象を生み出す土台となります。
Step 3-4|ファンデーションとコントゥアリング
ファンデーションの選択と、立体感の構築方法について解説します。
ファンデーション|「ツヤ」こそが生命線
ファンデーションは、マットタイプよりもツヤタイプを選びます。マットな質感は「成熟」「乾燥」といった、「バブみ」の対極にある属性を連想させるため、ここでは回避するべきです。
技術としては、カバー力は最小限に留めます。肌の色ムラを均一にする程度にし、気になる箇所はコンシーラーでポイントカバーします。肌が「息をしている」ような軽さと、光を反射する潤いが最重要です。
コントゥアリング|「丸み」を強調する立体感
「バブみ顔」の輪郭は、一般的な「小顔メイク」とは異なるアプローチを必要とします。ここでいう「シャープ」さとは、角張っていること(Vライン)ではなく、たるんでいないこと(リフトアップ)を指します。
シェーディングの目的は顔を「小さく」見せることではなく、フェイスラインの「たるみ」や「もたつき」といった加齢の兆候を消すために最小限に使用します。ハイライトは、顔の高い部分に乗せ、立体感と透明感を生み出します。特に「丸い額」や「ふっくらした頬(オージーカーブ)」を演出するため、頬骨の上や額の中央にツヤを集中させ、ハリのある丸みを強調します。
アイメイク編|究極の「愛され目」デザイン術
「バブみ」のアイメイクは、目の絶対的な大きさよりも、目の位置と形状を操作することに重点を置きます。私が目指すのは「中顔面の短縮」と「攻撃性の排除」です。これは「涙袋」と「タレ目ライン」という二つの主要な技術によって達成されます。
最重要|涙袋の完全構築(中顔面短縮の核)
涙袋のメイクは、「バブみ」において最も重要な要素の一つです。涙袋は「目の縦幅が強調される」ことで、視覚的に目を大きく見せます。
涙袋メイクの5ステップ
涙袋メイクは、ただ光らせるだけでは不自然になります。私が実践している、プロフェッショナルな5ステップのテクニックを紹介します。
- ベースシャドウ|下まぶた全体にマットなベージュなど、明るすぎず暗すぎないアイシャドウをのせ、土台を整えます。
- 光の注入(コンシーラー)|自分の肌色かワントーン明るいコンシーラーを、ぷっくりさせたい部分(黒目の下)に細く乗せます。これが涙袋の「中身」となり、立体的な膨らみを生み出します。
- 影の偽装|にこっと笑った時にできる涙袋の下の線に沿って、アイブロウペンシルや影用ライナーで影を描きます。黒目幅ぐらいから始め、すぐに指でぼかすのがコツです。
- 輝きの付与|繊細なパールが入ったベージュ系のアイシャドウを黒目の下に入れます。より強調したい場合は、ラメやグリッターをアクセントとして重ねます。
- 下まつ毛のマスカラ|最後に下まつ毛にマスカラを塗り、目の縦幅をさらに強調し、涙袋のメイクを顔から浮かせないように固定します。
涙袋メイクの持続性を高めるコツ
涙袋メイクは、目元にクマやむくみがあると台無しになります。ツボ押しやマッサージといった日々のケアが、メイクの仕上がりを左右します。
涙袋メイクは時間が経つとヨレやすいため、メイクの最後に「メイクを固定する効果のあるミスト」を使用し、化粧崩れを防ぐことが推奨されます。
「タレ目」ラインとアイシャドウ・まつ毛
涙袋と並んで重要なのが、目元の印象を決定づけるラインとカラーです。
「タレ目」ラインの黄金比率(優しい印象の設計)
つり上がったキャットラインは「強さ」を象徴しますが、「バブみ」では対照的に「優しさ」「無邪気さ」を演出する「タレ目」ラインが求められます。
目尻のアイラインを「やや下げて描く」のが基本です。目尻を「3mmほど外側に伸ばし長めに引く」ことで、目の横幅も確保しつつ、自然にタレ目に見せます。色はブラックではなく、ブラウン系(柔らかいブラウン、赤みブラウンなど)の使用が推奨されます。ブラックはラインを「強調」し、ブラウンはラインを「ぼかし」ます。「バブみ」においてアイラインの目的は「締める」ことではなく、「目の角度を偽装する」ことです。
アイシャドウとまつ毛(丸みと束感)
アイシャドウの色は、ベビーピンク、パステルカラー、コーラル系など、柔らかく肌なじみの良い色を選びます。
ラメやグリッターはまぶた全体ではなく、「上まぶたの中心」にのみ塗ります。これにより、まぶたに「高さ」が生まれ、目が「丸く可愛らしい印象」に仕上がります。まつ毛は「細かく束感を作る」と、アイドルのような洗練された「バブみ」が完成します。
チーク&リップ・ブロウ編|血色感と細部の仕上げ
目元と肌で作った「丸み」と「幼さ」の印象を、チーク、唇、眉で完成させます。この「足し算」と「引き算」のコントラストが、顔全体のバランスを「バブみ」に最適化します。
チーク編|「じゅわっ」と内側から上気する血色感
「バブみ」におけるチークは、顔に「色」を塗る行為ではなく、肌の「質感」と「温度」を操作する行為です。頬に「血色=生命感」と「ツヤ=潤い」を同時に与え、「オージーカーブ(ふっくらした頬)」を視覚的に強調します。
質感と色の選択
この目的を達成するため、パウダータイプよりもクリームやリキッドタイプが強く推奨されます。パウダーは「肌の上に乗る」のに対し、クリーム/リキッドは「肌に溶け込む」からです。
「内側から蒸気したような自然なツヤ感や血色感」や「もっちりとしたハリのあるお肌」を演出するには、クリームまたはリキッドタイプが最適です。色は、肌のトーンを明るく見せ、無邪気さを演出する「ピンク系」や「レッド系」が選択されます。
配置の鉄則と応用テクニック
チークの入れ方は、顔の印象を大きく左右します。「頬骨の高い位置」に塗ることが鉄則です。鼻より低い位置にチークをつけると、頬が下がった印象に見えてしまうため、これを避けます。リフトアップ効果を得るために不可欠です。
チークを「丸く」入れることも推奨されます。シャープな斜めの入れ方とは対照的に、丸い形は顔の「幼さ」と「可愛らしさ」を強調します。指でトントンと伸ばした後、指に残ったチークを「鼻先やあご先に塗る」と、顔全体の血色感が統一され、より高度な「バブみ」が演出されます。
リップ&ブロウ編|細部が全体を仕上げる
顔の「フレーム」である唇と眉を整えます。唇は「潤い」と「丸み」を極大化し、眉は「印象」を極小化します。
「ぷるぷるリップ」の作り方
「ぽってりしている唇」を再現します。「ぷるんとした丸み」と「ナチュラルな血色感」がポイントです。「ツヤ」「ちゅるちゅるした質感」が必須であり、リッププランパーやグロスを積極的に使用し、唇の縦ジワを消し、光を反射する「うるうるちゅやんな唇」を作ります。
色は「ピンク系」や「コーラルカラー」が基本です。ダークカラーやマットカラーを避け、明るくジューシーな色を選びます。
「抜け感」を生む眉の整え方
眉は顔の印象を決定づける「フレーム」です。強い眉、アーチのある眉、暗い眉は「成熟」「意志の強さ」を象B徴します。
「バブみメイク」では、このフレームの印象を意図的に弱めることで、相対的に目や頬の「幼さ」を際立たせます。「髪の毛よりワントーン明るいカラー」の眉マスカラを選び、眉の存在感を薄れさせます。眉毛は「やや太め」にし、エッジを立たせず「ぼかす」こと。アーチをつけすぎず、平行に近いソフトなアーチが望ましいです。
推奨ツールキット|「バブみ」を叶える厳選コスメ
「バブみメイク」は、高価なデパコス(百貨店コスメ)よりも、トレンドの質感や色味を迅速に製品化するプチプラ(ドラッグストア)ブランドと非常に相性が良いです。
プチプラ(CANMAKE・CEZANNE)の優位性
私がよく使うCANMAKE(キャンメイク)やCEZANNE(セザンヌ)といったブランドは、「愛らしい血色感をプラスするため」に必要な柔らかい発色、トレンドのピンクやコーラル系のアイテムを豊富に揃えています。
「肌に溶け込むように自然に発色」するテクスチャは、先に述べた「じゅわっ」としたチークや、「ちゅるん」としたリップに最適です。
CANMAKE vs. CEZANNE 戦略的使い分け
両ブランドは「バブみメイク」において異なる戦略的役割を果たします。
- CEZANNE (セザンヌ)|特徴は「最低限でお手頃価格」「失敗しない無難な仕上がり」で、ベーシックかつ機能的です。「バブみメイク」の基盤を作るのに適しています。例|ナチュラルな涙袋の影、肌なじみの良いチークなど、失敗の許されないパーツに最適です。
- CANMAKE (キャンメイク)|特徴は「より流行を取り入れたカラー」「プラス1でもうワンランク上の仕上がり」です。「バブみメイク」にトレンド感と華やかさを加えるのに適しています。例|トレンド質感のリップ、多色グリッターなど、交換なパーツに最適です。
| CEZANNEの役割 | CANMAKEの役割 | |
| 涙袋 (影) | 失敗しない「無難な仕上がり」。自然な影色。 | – |
| 涙袋 (ラメ) | – | 「流行を取り入れた」大粒・多色グリッター。 |
| チーク | 「最低限で」自然な血色感をプラス。 | 「プラス1」のツヤ感・トレンドカラー。 |
| リップ | 定番的な保湿・色付きリップ。 | 「ワンランク上」のプランパー効果、トレンド質感。 |
| アイシャドウ | ベーシックなブラウン・ピンクパレット。 | 「流行を取り入れた」華やかな配色、新質感。 |
| 推奨ユーザー | メイク初心者、ナチュラルな「バブみ」を求める人。 | トレンドに敏感、華やかな「バブみ」を求める人。 |
まとめ|トータルバランスと「バブみ」の持続
「バブみメイク」は、各パーツ(目、頬、唇)が全て「丸み」「ツヤ」「血色」という共通のゴールに向かって構築されます。一つのパーツだけを過剰にすると、全体のバランスが崩れます。私がいつも心がけているのは、肌の「ツヤ感」、チークの「血色感」、涙袋の「立体感」、リップの「潤い」が互いに響き合い、調和することです。
「バブみ」は「無邪気さ」の演出であり、「化粧の濃さ」ではありません。全体的には「ナチュラルメイク」を心がけることが重要です。服装やヘアスタイル(例|パステルカラーの服、ゆるい巻き髪)とのバランスも考慮し、トータルで「柔らかい」印象に統一することが、スタイルの完成度を高めます。このメイクはツヤ感と立体的な涙袋が命であり、ヨレやすいです。メイクの仕上げに「メイクを固定する効果のあるミスト」を吹きかけ、一日中「バブみ」をキープすることが、このスタイルを完成させる最後の鍵となります。

